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津地方裁判所 昭和48年(行ウ)2号 判決 1973年10月11日

三重県四日市市南富田町一〇の二四

原告

山下敏男

被告

四日市税務署長

天地武文

右指定代理人

浜卓雄

真弓勇

森本善勝

田中利刀

市川朋生

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の申立

一  原告

(一)  被告が原告に対して昭和四二年一月一七日した昭和四〇年分所得税の更正処分ならびに昭和四三年二月二七日した昭和四〇年分所得税の再更正処分および昭和四一年分所得税の更正処分をいずれも取り消す。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決

二  被告

主文同旨の判決

第二当事者の主張

一  請求原因

(一)  被告は、原告に対し、昭和四二年一月一七日昭和四〇年分所得税の更正処分を、昭和四三年二月二七日右所得税の再更正処分および昭和四一年分所得税の更正処分をした。

(二)  そこで、原告は、昭和四七年五月三〇日、被告に対し異議申立をしたが、三カ月を経過しても被告から何の決定もなかつたので、同年一一月三日、名古屋国税不服審判所に対し審査請求をしたところ、同審判所は、昭和四八年四月一七日付で右審査請求を却下した。

(三)  しかしながら、右(一)記載の各処分は、税務担当職員の極めて感情的かつ報復的な処分であつて、極めて不合理である。特に、被告は、昭和四〇年分所得税の再更正処分につき同年度所得金額を金一三一万〇、三八〇円と認定したが、原告の経営する撚糸業の業界は例年所得の大きな増減があまりみられないうえに、同年は産業界一般に不況で原告にとつても特殊の損害が生じているのに、昭和四一年分の更正された所得金額一〇五万三、五〇〇円よりも多く認定しているのみならず、いずれも独断、偏見に基づいた査定である。

よつて、原告は、被告に対し前記各処分の取消を求める。

二  被告の本案前の答弁

被告は、昭和四二年一月一七日付をもつて昭和四〇年分所得税の更正処分をなし、その通知書を翌一八日に、昭和四三年二月二七日付をもつて右所得税の再更正処分および昭和四一年分所得税の更正処分をなし、その各通知書を翌二八日にそれぞた原告方へ書留郵便で送達したところ、原告において右各通知書の受領を拒否した。しかし、原告は、右送達により、右各通知書の内容を知りうる状態におかれたものというべきであるから、右各更正および再更正処分の効力は、右各通知書が原告方に送達された日に発生したものと解すべきところ、原告は、右各処分につき国税通則法(昭和四五年法律第八号による改正前の法律)七六条一項所定の期間内に異議の申立をしていないので、本件訴は同法八七条一項の不服申立手続を経ていない不適法なものである。

三  被告の主張に対する原告の答弁

被告主張の日頃、各更正処分および再更正処分の通知書が書留郵便で原告方に送達されたことは認めるが、前記のように各処分が極めて不合理なものであり、かつまた担当職員は従来の処分決定の経過を説明にもこず、原告としては右各処分が納得できなかつたので、その受領を拒否したもので、本件各処分が原告に対して適法に通知されたものとはいえない。

第三証拠

一  原告

乙第一ないし第三号証の各一の成立は認める、その余の乙号各証の成立は不知。

二  被告

乙第一ないし第三号証の各一、二および第四号証を提出した。

理由

一  被告が原告に対し、昭和四二年一月一七日昭和四〇年分所得税の更正処分を、さらに昭和四三年二月二七日右所得税の再更正処分および昭和四一年分所得税の更正処分をしたことは当事者間に争いがない。

二  そこで、先ず被告の本案前の主張について判断する。

被告が昭和四二年一月一八日頃昭和四〇年分所得税の更正処分の通知書を、昭和四三年二月二八日頃右更正処分の再更正処分および昭和四一年分所得税の更正処分の通知書を原告方に書留郵便に付して送達したこと、原告がその各郵便物を右各処分の通知書であることを知りながらその受領を拒否したことは当事者間に争いがないところ、原告主張の受領拒否理由は、右受領を拒絶する正当な理由とは到底解せられないので、たとえ右処分の通知書が原告の手に渡らなかつたとしても、右送達により原告は右各更正処分および再更正処分の通知書の内容を了知しうる状態におかれたというべきであるから、右各処分は原告に対して有効に告知されたものと解すべきである。

そうすると、原告は、右各告知を受けた日の翌日から起算して国税通則法(昭和四五年法律第八号による改正前の法律)七六条一項所定の一カ月の期間内に異議申立をすべきところ、原告が被告に対してした異議申立が右期間を経過した不適法なものであることは、原告の主張自体に徴して明らかであるから、本件訴は、同法八七条一項所定の不服申立手続を経ていない不適法なものである。

よつて、原告の本件訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 白川芳澄 裁判官 林輝 裁判官 吉岡浩)

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